フリーランスエンジニア
フリーランスエンジニアとは
フリーランスエンジニアとは、特定の企業に雇用されず、個人事業主として企業と直接契約を結び、開発業務を請け負うエンジニアである。
契約形態は主に以下の2種類がある。
- 準委任契約:稼働時間に対して報酬が発生。成果物の完成義務はない。
- 請負契約:成果物の納品に対して報酬が発生。完成責任を負う。
案件の獲得方法としては、フリーランスエージェント経由、直接契約、クラウドソーシング、自社サービス運営など多様な形態がある。
フリーランスの働き方
エージェント経由の案件
レバテックフリーランス、ITプロパートナーズ、ミッドワークス、PE-BANKなど、フリーランスエンジニア向けのエージェントを経由して案件を獲得する方法。最も一般的な形態である。
特徴:
- 営業活動を代行してもらえる
- 契約周りの手続きをサポートしてもらえる
- マージン(10〜20%程度)が発生する
- 条件に合った案件を紹介してもらえる
直接契約
企業と直接契約を結ぶ形態。人脈やリファラル経由で案件を獲得することが多い。
特徴:
- マージンがなく、単価が高い
- 営業・契約・請求すべて自分で行う必要がある
- 信頼関係が構築できれば長期契約になりやすい
- トラブル時の対応も自己責任
自社サービス運営
自分でWebサービスやアプリを開発・運営し、広告収入やサブスクリプション収入を得る形態。
特徴:
- 成功すれば大きな収入に
- 時間の自由度が最も高い
- リスクも最も高い
- 開発だけでなくマーケティングも必要
フリーランスのメリット
1. 高い収入の可能性
正社員と比較して、同等のスキルでも高い収入を得られる可能性がある。一般的に、フリーランスの月額単価は以下のようなレンジである。
| 経験年数 | 月額単価の目安 |
|---|---|
| 3年未満 | 50〜70万円 |
| 3〜5年 | 60〜80万円 |
| 5〜10年 | 70〜100万円 |
| 10年以上 | 80〜150万円以上 |
※スキル、技術領域、案件の難易度により大きく異なります。
これを年収に換算すると、経験5年程度で年収1,000万円前後に達することも珍しくない。ただし、社会保険や福利厚生がないことを考慮する必要がある。
2. 働き方の自由度
働く場所、時間、案件を自分で選べる。リモートワークの案件も多く、地方在住でも都市部の案件に参加できる。
また、一定期間集中して働いた後にまとまった休暇を取る、といった働き方も可能である。
3. 案件選択の自由
興味のある技術領域や業界の案件を選ぶことができる。正社員では異動やプロジェクトアサインを選べないことが多いが、フリーランスは案件ごとに選択できる。
スキルアップしたい技術を使う案件を意図的に選ぶことで、効率的にキャリアを構築できる。
4. 多様な経験
複数の企業やプロジェクトを経験することで、様々な開発手法、技術スタック、組織文化に触れることができる。この多様な経験は、技術者としての視野を広げる。
5. 経費の活用
個人事業主として、業務に関連する支出を経費として計上できる。PC、書籍、セミナー参加費、通信費などを経費にすることで、税負担を軽減できる。
フリーランスのデメリット
1. 収入の不安定さ
案件が途切れると収入がゼロになるリスクがある。また、経済状況や市場動向によっては、案件獲得が難しくなる時期もある。
コロナ禍では案件が減少した時期もあり、常に一定の収入が保証されるわけではない。
2. 福利厚生がない
健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険などの社会保障制度を自分で手配する必要がある。
- 健康保険:国民健康保険に加入(保険料は全額自己負担)
- 年金:国民年金のみ(厚生年金がないため将来の年金額が少ない)
- 退職金:なし(小規模企業共済などで自分で積み立てる必要あり)
- 有給休暇:なし(休むと収入が減る)
3. 営業・事務の負担
案件獲得のための営業活動、契約書の確認、請求書の発行、確定申告など、開発以外の業務が発生する。
特に確定申告は、正社員時代にはなかった作業であり、帳簿付けや経費管理が必要になる。
4. スキル停滞のリスク
案件に追われて新しい技術の学習時間が取れなくなったり、同じ技術領域の案件ばかり受けていると、スキルが停滞するリスクがある。
意識的にスキルアップの時間を確保する必要がある。
5. 社会的信用の低さ
住宅ローンやクレジットカードの審査において、正社員と比較して不利になることがある。収入が高くても、「安定性」の観点で評価が下がることがある。
6. 孤独感
会社に所属していないため、同僚との日常的なコミュニケーションがなくなる。特にフルリモートの案件では、孤独を感じることもある。
コミュニティへの参加や、同業者との交流を意識的に行う必要がある。
独立のタイミング
フリーランスになるタイミングについては、以下のような目安がある。
推奨される経験年数
一般的には、正社員として3〜5年程度の実務経験を積んでから独立することが推奨される。
理由:
- 一定のスキルがないと案件獲得が難しい
- チーム開発の作法を理解している必要がある
- 業界の相場観や商習慣を把握しておく必要がある
- 人脈がないと案件獲得の幅が狭い
独立前のチェックリスト
独立を検討する際は、以下の点を確認することをお勧めする。
- [ ] 1人で開発タスクを完遂できるか
- [ ] 複数の技術スタックに対応できるか
- [ ] 案件を紹介してくれそうな人脈があるか
- [ ] 半年分程度の生活費の貯蓄があるか
- [ ] 確定申告や経理の基礎知識があるか
- [ ] 不安定な収入に耐えられるメンタルがあるか
フリーランスに向いている人
以下のような志向を持つ人は、フリーランスでの活躍が期待できる。
自己管理能力が高い
上司や同僚がいない環境でも、自分でタスクを管理し、スケジュールを守れる人。
変化を楽しめる
案件が変わるごとに環境が変わる。新しい環境への適応を楽しめる人に向いている。
コミュニケーション能力がある
クライアントとの関係構築、要件のすり合わせ、トラブル時の交渉など、コミュニケーション能力が求められる。
収入の変動に耐えられる
収入が不安定になる時期もある。精神的・経済的にその変動に耐えられる人。
自分のスキルに自信がある
即戦力として求められるため、自分のスキルに一定の自信がある人。
フリーランスに向いていない人
一方、以下のような志向を持つ人は、フリーランスでの満足度が低くなる可能性がある。
安定を最優先する
収入や雇用の安定を最優先する場合、フリーランスは合わない。
営業や交渉が苦手
案件獲得や単価交渉に抵抗がある場合、ストレスを感じやすい。
事務作業が苦手
経理、確定申告、契約書の確認など、事務作業が発生する。これらを苦痛に感じる場合は負担になる。
チームで働きたい
フリーランスは外部からの参加になるため、チームの一員としての帰属感は得にくい。
収入とコスト
フリーランスの収入を正社員と比較する際は、見かけの金額だけでなく、実質的な手取りを計算することが重要である。
月額単価80万円の場合の試算
| 項目 | 金額(年額) |
|---|---|
| 売上 | 960万円 |
| 国民健康保険 | 約90万円 |
| 国民年金 | 約20万円 |
| 所得税・住民税 | 約150万円 |
| 経費(PC、書籍等) | 約50万円 |
| 退職金積立(共済) | 約84万円 |
| 手取り | 約566万円 |
※概算値であり、個人の状況により異なります。
これを正社員の年収と比較する際は、正社員側の福利厚生(退職金、社会保険の会社負担分など)も考慮する必要がある。
リスク管理
フリーランスとして長く活動するためには、リスク管理が重要である。
貯蓄
最低でも生活費3〜6ヶ月分、できれば1年分の貯蓄を維持する。案件が途切れた時や病気の時のセーフティネットとなる。
保険
- 国民健康保険:病気やケガに備える(付加給付がないため高額療養費制度を理解しておく)
- 就業不能保険:長期療養が必要になった時のための保険
- 賠償責任保険:納品物に問題があった場合の損害賠償に備える
税金・経理
- 青色申告:最大65万円の控除が受けられる
- 帳簿管理:freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを活用
- 税理士:売上が増えたら税理士に依頼することも検討
スキルアップ
- 常に市場価値を維持するため、新しい技術の学習を続ける
- 複数の技術領域に対応できるようにする
- 単価アップにつながる資格取得も検討
キャリアパス
フリーランスエンジニアのキャリアパスは多様である。
フリーランスを続ける
スキルアップと単価アップを続け、長期的にフリーランスとして活動する。
法人化
売上が増えたら、法人化して節税効果を得る。年商1,000万円を超えたあたりから検討することが多い。
正社員に戻る
フリーランス経験を活かして、より良い条件で正社員に戻る選択もある。特にマネジメントや上流工程を経験したい場合に有効。
起業
フリーランス時代の経験や人脈を活かして、自社サービスを立ち上げたり、開発会社を設立したりする。
まとめ
フリーランスエンジニアは、高い収入と働き方の自由度を得られる一方で、収入の不安定さ、福利厚生の欠如、営業・事務の負担といったデメリットも存在する。
独立を検討する際は、一定の実務経験を積み、スキルと人脈を構築した上で、リスクに備えた準備を行うことが重要である。
自己管理能力が高く、変化を楽しめ、自分のスキルに自信がある人にとっては、やりがいのある働き方である。一方で、安定を最優先する人や、営業・事務作業が苦手な人には向いていない。
フリーランスは「正社員の上位互換」ではなく、異なる働き方の選択肢である。自分の価値観やライフスタイルに合っているかを慎重に検討することをお勧めする。