輸出戻し税

前回の記事では、消費税が「赤字でも払わなければならない過酷な税」であることを解説しました。しかし、日本にはこの消費税を払う必要がないどころか、 税務署からお金(還付金)を受け取ることができる特権的な企業 が存在します。

それが、輸出大企業 です。 本記事では、消費税法が定める「輸出免税」と「輸出戻し税(消費税還付金)」の仕組みについて解説します。

輸出免税と還付金の仕組み

消費税には「国内で消費されるものに課税する」という原則があります。 そのため、 海外への輸出取引には消費税がかかりません(税率0%)

これだけであれば「税金を払わなくていい」だけで済みますが、ここからが重要です。 輸出企業は、 「仕入れの時に下請け企業などに支払った消費税分」を、税務署から返してもらう(還付)ことができます

具体的な数値で見てみましょう。

パターン④:輸出企業の場合

項目 ① 国内販売企業 ④ 輸出企業
売上 1,100万円 (税込) 1,000万円 (免税)
(受取消費税) 100万円 0万円
仕入・経費 (税込) 660万円 660万円
(支払った消費税) 60万円 60万円
消費税の計算
売上にかかる消費税 100万円 0万円
仕入税額控除 ▲60万円 ▲60万円
納税額 / 還付額 40万円 納税 60万円 還付 (受取)
最終利益への影響 利益が減る 利益が増える

国内販売企業は、売上で預かった100万から仕入で払った60万を引いた「40万円」を納税します。 一方、輸出企業は売上の消費税が0円なので、仕入で払った60万円を引くと「マイナス60万円」となります。このマイナス分が、 「還付金」として現金で支払われます

実質的な輸出補助金

「仕入れで払いすぎた分が戻ってくるだけだから、損得ゼロではないか?」と思われるかもしれません。 しかし、前回の記事で見た通り、消費税の実態は価格転嫁が困難な「事業者への直接税」です。

下請けの中小企業が、親会社(輸出企業)に対して消費税分を十分に価格転嫁できず、身銭を切って納税しているケースを考えてみてください。 下請け企業が苦しんで納税した消費税が、輸出企業には「還付金」として流れ込んでいる構図になります。

これは経済学的には 輸出補助金 と同じ機能を果たしており、国内中小企業から輸出大企業への所得移転とも言えます。

還付金の規模:税収の約3割が消えている

この還付金の規模は、国家予算レベルで見ても極めて巨額です。

令和6年度のデータを見ると、その実態が分かります。

項目 金額 備考
消費税収納済額 43.5兆円 企業が税務署に納めた総額
還付金 ▲11.4兆円 輸出企業等へ返された金額
地方消費税分 ▲7.2兆円 地方自治体への払込
実際の国税収入 24.9兆円 最終的に国庫に残った金額

※出典:財務省「令和6年度国税収納金整理資金受払計算書」(第219回国会提出)

なんと、企業が必死に納めた消費税(43.5兆円)のうち、 約26%にあたる11.4兆円もが還付金として払い戻されています

消費税増税のたびに「社会保障のため」と説明されてきましたが、その裏で輸出企業への還付金も自動的に増額され、その原資として中小企業の納税が充てられているのが現実です。

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