消費税とは?
消費税は、私たちの生活に最も身近な税金の一つですが、その実態は「消費者が払う税金」ではなく、「事業者が払う付加価値税」 であることをご存知でしょうか?
本記事では、消費税の会計的な仕組みを紐解き、なぜこの税制が日本の雇用を破壊し、非正規雇用を増やしてしまうのか、その構造的な欠陥を明らかにします。
消費税の正体=付加価値税
日本の消費税は、世界的には 付加価値税(Value Added Tax: VAT) と呼ばれます。 法律上の定義や会計処理を見ると、その課税対象は「付加価値」です。
では、会計上の「付加価値」とは何でしょうか? 簡易的に表すと以下のようになります。
つまり、消費税とは 「人件費と利益に対して課される税金」 なのです。 「第二法人税」や「雇用税」と呼ばれる所以がここにあります。
内製化を阻害する仕組み(雇用へのペナルティ)
消費税の計算方法は以下の通りです。
ここで重要なのは、 「給料(正規雇用などの人件費)」は課税仕入に含まれない(控除できない)のに対し、「外注費・派遣費」は課税仕入に含まれる (控除できる)という点です。
この仕組みにより、同じ利益を出していても、 「人を雇う企業」は税負担が重くなり、「外注・派遣を使う企業」は税負担が軽くなる という現象が起きます。
具体的な数値例で比較してみましょう。
パターンA vs パターンB:人件費と外注費の違い
売上1,100万円(税込)、実質的な経費(人件費+その他経費)の合計が同じ990万円の企業を比較します。
| 項目 | ① パターンA(正規雇用中心) | ② パターンB(外注・派遣中心) |
|---|---|---|
| 売上 (税込) | 1,100万円 | 1,100万円 |
| (うち税抜売上) | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 経費構成 | ||
| その他の経費 (税込) | 330万円 | 660万円 |
| 人件費 (不課税) | 660万円 | 330万円 |
| (外注費等含む経費) | (少ない) | (多い) |
| 税引前利益 | 110万円 | 110万円 |
| 消費税の計算 | ||
| 売上にかかる消費税 | 100万円 | 100万円 |
| 仕入税額控除 | ▲30万円 | ▲60万円 |
| (A) 支払消費税額 | 70万円 | 40万円 |
| 最終手残り | ||
| 税引後実質利益 | 40万円 | 70万円 |
※計算簡略化のため、その他の経費はすべて課税仕入としています。
結果の分析
表から分かる通り、事業としての「税引前利益」はどちらも110万円で同じです。 しかし、 消費税の納税額はパターンA(70万円)の方が、パターンB(40万円)よりも30万円も高くなります 。
その結果、最終的な実質利益は、人を大切に雇っているパターンAの方が少なくなってしまいます。
この仕組みにより、同じ利益を出していても、 「人を雇う企業」は税負担が重くなり、「外注・派遣を使う企業」は税負担が軽くなる という現象が起きます。
これは企業の選択を歪める強力な構造的インセンティブとして機能し、消費税増税のたびに非正規雇用が増加してきた主要因の一つです。
赤字でも納税義務がある過酷さ
法人税は「利益」にかかる税金なので、赤字であれば支払う必要はありません。 しかし、消費税は「付加価値(人件費+利益)」にかかる税金なので、 たとえ大赤字であっても、人件費を払っている限り納税義務が発生します 。
③ パターンC:赤字の場合
| 項目 | ③ 赤字の場合 |
|---|---|
| 売上 (税込) | 1,100万円 |
| その他の経費 (税込) | 660万円 |
| 人件費 | 550万円 |
| 税引前利益 | ▲110万円 (赤字) |
| 売上にかかる消費税 | 100万円 |
| 仕入税額控除 | ▲60万円 |
| 支払消費税額 | 40万円 |
| 税引後実質利益 | ▲150万円 |
このように、110万円の赤字で苦しんでいる企業に対しても、さらに40万円の消費税支払いが追い討ちをかけます。資金繰りの苦しい中小企業にとって、赤字でも納税義務が発生する消費税は、経営存続を脅かす極めて過酷な税制です。
税の滞納状況
この過酷な性質を裏付けるデータとして、「滞納」の発生状況があります。
国税庁の「令和4年度租税滞納状況について」によれば、 新規発生滞納額の55.7%(約3,666億円)を消費税が占めています 。 これは2位の申告所得税(約18%)を大きく引き離して断トツの1位であり、「払いたくても払えない」中小零細企業がいかに多いかを如実に示しています。
消費税は、消費者が預けたお金を企業がネコババしている(益税)のではなく、 企業が身銭を切って(時には借金をして)納税している というのが実態です。
次回の記事では、この過酷な消費税において、なぜか「払うどころか還付金をもらって儲けている」輸出企業のカラクリについて解説します。